歯を守るということ。 第一話「先生、この銀歯って体に悪いんですか?」
「先生、この銀歯は体に悪いんですか?」
診療室で、この質問を受けることがあります。
最近ではインターネットやSNSで、「銀歯は危険」「パラジウムは有害」「セラミックの方が安全」といった情報を目にする機会が増えました。
そのため、「銀歯を全部白くした方がいいですか?」「今すぐ取り替えた方がいいですか?」と不安そうに相談される患者さんも少なくありません。
私はその質問を受けるたびに、考えます。
患者さんが本当に知りたいことは、「銀歯が危険かどうか」だけではないからです。
本当に知りたいのは、
「私はこれから先も、自分の歯で食事ができるのでしょうか。」
その答えなのではないかと思うのです。
歯科医師になって気づいたこと
歯科医師になって以来、本当にたくさんのお口を診てきました。
20代の方、子育て中の方、仕事を頑張っている方、そして80代、90代の方まで。
同じように虫歯を治療してきたはずなのに、80歳になってもほとんど自分の歯で食事ができる方がいる一方で、50代、60代で入れ歯に悩まれる方もいらっしゃいます。
この違いは何なのでしょうか。
年齢でしょうか。
遺伝でしょうか。
もちろん、それらも関係します。
しかし、診療を続ける中で確信したことがあります。
歯を失う人は、「銀歯だから」歯を失うのではありません。
歯を失う人の多くは、
治療を繰り返してしまうことによって、少しずつ歯を失っていくのです。
歯は、一度削ると元には戻りません
私たちの体には、不思議な力があります。
骨は折れても治ります。
皮膚は傷ついても再生します。
しかし、歯だけは違います。
虫歯を削ってしまった歯は、二度と元には戻りません。
詰め物をしても、それは人工物です。
被せ物をしても、元の歯が戻るわけではありません。
だからこそ、歯科医師にとって「削る」という行為は、とても重い意味を持っています。
できるだけ削らない。
できるだけ神経を残す。
そして、できるだけ治療を繰り返さない。
私たちが日々大切にしているのは、この当たり前のようで、とても難しいことです。
銀歯が悪いわけではありません
ここで誤解していただきたくないことがあります。
銀歯は、決して「悪い材料」ではありません。
保険診療で長年使用され、多くの患者さんのお口を支えてきた実績があります。
丈夫で、しっかり噛むことができる材料です。
では、なぜ「銀歯は良くない」と言われることがあるのでしょうか。
理由は、銀歯そのものだけではありません。
銀歯に使われる金銀パラジウム合金は金属です。
そのため、体質によっては金属アレルギーの原因となる可能性があります。
また、長い年月の中で歯と詰め物の境目に変化が生じ、細菌が入り込み、銀歯の下で虫歯が再発する「二次むし歯」が起こることもあります。
しかし、これらは「銀歯だから必ず起こる」という話ではありません。
大切なのは、その歯がどのような状態で治療され、どのように管理されてきたかです。
私たちが本当に大切にしていること
西阿知クォーツ歯科クリニックでは、「悪くなった歯を治すこと」だけを目的にはしていません。
私たちが目指しているのは、
患者さんが10年後も、20年後も、自分の歯で笑い、美味しく食事をし、大切な人と楽しい時間を過ごせること。
その未来です。
だからこそ、
「なぜ虫歯になったのか。」
「なぜ同じ歯を何度も治療しているのか。」
「どうすれば再治療を防げるのか。」
この"原因"を一緒に考えることを何よりも大切にしています。
原因を解決しなければ、治療だけを繰り返すことになります。
そして、その繰り返しこそが、大切な歯を少しずつ失わせてしまう最大の理由なのです。
このブログで伝えたいこと
このシリーズでは、「銀歯は危険です」とお伝えしたいわけではありません。
「セラミックならすべて解決します」とお伝えしたいわけでもありません。
私が本当にお伝えしたいのは、
"歯を守るために、私たちは何を選び、何を大切にすればよいのか"
ということです。
その答えは、一人ひとり違います。
なるべく安く長持ちはしなくても噛めたらよいという方にとっては保険診療が最適です。
セラミック治療が適している方もいらっしゃいます。
だから私たちは、「保険か、自費か」という基準ではなく、「その方の人生にとって、どの治療が最善なのか」を一緒に考えます。
歯科医療は、歯を治す仕事ではありません。
患者さんの未来を守る仕事だと、私たちは考えています。
次回は、「本当に怖いのは銀歯ではなく、治療を繰り返すこと」というテーマで、歯を失う本当の原因についてお話しします。
